読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

下京

雑記

とうとう来てしまった上京の日。

ちょうど1年前は浪人生として上洛した。あの頃、僕はどんな事を思っていただろう?初めての一人暮らしに対する不安もあったが、やはりそれ以上に期待や希望を抱いていたに違いない。

今回は、大学生として上京する。皆が憧れる東京。あれほどまでに憧れた大学生。しかし、僕が今抱えているのは希望ではなく、失望と、諦観と、絶望だった。二度も大学受験に失敗し、不本意な大学に通う羽目になったのであるから当然ではある。

僕は正直、故郷を離れたくない。東京と比べると田舎で何にも無いが、それでも僕はここが好きだ。大学に行かず、故郷に残ることも考えたが、こんな田舎にいては未来が無いと家族に反対された(ゴミみたいな大学に行ったって未来が無いのだから同じだろと言おうとしたがやめた)。

しかしまあ厭世家を気取るには東京みたいな街は持って来いかもしれない。都市は孤独感や絶望感を増幅させる。大勢の人々が暮らす街にたった一人でいる時の孤独感や、自分の背負う業など知らずに浮かれた顔で往来に犇く人々を見た日の絶望感など、筆舌に尽くしがたい。

 

暇を持て余していたので、たまには読書でもするかと青空文庫を眺めていると、久米正雄のかの有名な「受験生の手記」が目に入った。タイトルに惹かれて何となしに読んだのだが、すっかり主人公健吉に感情移入してしまった。彼の抱える孤独や苦悩は、僕が受験生当時抱えていたものと全く同じだった。夢破れ、凡ゆる物を失い、破滅の道を辿る彼の姿は自分と重なり、涙が止まらなかった。

きっとこれは、僕が辿ったかもしれない、否、これから辿るかもしれない道の1つだろう。僕の愛する故郷から忌み嫌う東京への行程は、健吉にとっての湖の突堤になるのだろうか。

上京には華々しいイメージばかりが付きまとう。フィクションの中で描かれる上京が、そういうものばかりだからかもしれない。しかし、実際には夢破れ、失意にまみれながらの上京だってあるのだ。

都に上っている筈なのに、気分はさながら都落ち。「下京」とでも言ったところか。

受験生の手記

受験生の手記

 

 

広告を非表示にする